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2022-02-28 注目動産

この動産に注目! ― 石化燃料 ―

 立春が過ぎてから気温こそまだ低いものの、気のせいか日差しの暖かさは確実に増してきている。全国の新型コロナウイルスの感染者数はまだ日々1万人を超える水準とは言え、一時のピークから減少傾向に転じており、桜が咲くごろには、状況もだいぶ落ち着いてきているではないかと多少の期待も芽生えている。晴れやかな気持ちで春を到来を迎えたいところだが、ここ数ヵ月懸念されていたロシアによるウクライナへの侵攻が現実となり、北朝鮮もまた弾道ミサイルの発射を繰り返していることを考えると、一筋縄で行くことはなさそうだ。

 ところで、ロシアが24日から開始したウクライナへの攻撃は早3日間経過し、それに関連する報道もここ数日のニュースの主役を独り占めにしている。国土面積や経済・軍事規模が自国よりはるかに小さい国に対して安全が脅かされているというロシアの開戦理由は、第2次世界大戦の時ならともかく、もし21世紀の今ではこのような理屈がまかりとおるとなると、この世界は約1世紀の間で何も成長しないこととなる。やはりそういう世の中になってほしくないと思う。国連でロシアを非難する決議案に対して一部国は棄権したものの、米欧を中心に多くの国は賛成しており、ウクライナを支援する一方で、ロシアの経済、産業および一部の特定の個人に対して制裁をかけている。すでにロシアの一部銀行が国際銀行間通信協会(SWIFT)から排除することも決められ、力任せのロシアにとってはもう少し真剣に考えるきっかけるになれたらいいと思う。

 ロシアの銀行が国際銀行間の送金・決済システムであるSWIFTから排除されると、同国が世界中の金融市場へのアクセスが制限され、企業や個人による輸入品の支払いや輸出品の受け取り、海外での借り入れや投資が難しくなる。当然ロシアの貿易相手も困ることとなり、代替のサプライヤーを探さなければならなくなる。とりわけロシアの主な輸出品である石油・天然ガスについては、輸出が滞り、世界のエネルギー価格が押し上げれるることとなる。日本でも、ロシアから石炭やガスなどの石化燃料を多く輸入しており、液化天然ガス(LNG)だけでみると、全体の1割弱がロシアから輸入される。ロシアへの制裁でエネルギー価格が高騰し、仕入れコストの上昇で企業の収益が圧迫されるほか、ガソリン代などの値上がりで家計消費も冷え込み、日本を含め世界全体のGDPが1%押し下げられるとの予想も出ている。

 ロシアが侵攻を開始してから3日間が経ち、ウクライナによる徹底抗戦が続けられている。ロシアはこの戦争を通じてウクライナに求めているものを手に入るため、払う代償はもはや軽いものではない。戦争の影響は戦いの当事者だけでなく、世界全体にも及ぼしはじめているなか、せめて世界を巻き込むこの「渦巻」がさらに広がらないでほしい。

(孫記)

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