お知らせ&コラム

2017-12-29 業界動向

2018年はどんな年?

 本コラムを執筆している12月29日で私も年内は仕事納め。
 今年の2月1日から、以後、毎月月末配信分の担当をさせていただきました。毎月月末の締め切りに向けて、「今月はどんなこと書こうかな。」と悩んでいましたが、あっという間に2017年の年末を迎えることになりました。
 今回は2017年の11回のコラムで私がコメントした後の動きや現在、考えていることを中心に触れていきたいと思います。

 2月1日(初回)は、トランプ大統領の就任決定前後(2016年11月)と就任後80日後の価格の変化(日経平均、原油、金、銅、アルミ)について触れました。(今回、NYダウを追加しています。)12月28日現在(金、銅、アルミニウムについては12月27日)時点の価格は以下のとおりです。

   1月30日 現在 変化率
日経平均株価(終値、円)  19,368.35  22,783.98 17.6%
NYダウ(終値、ドル)  18,332.74 24,837.51 35.5%
ドバイ原油(ドル) 53.35 63.95 19.9%
金(1グラム、円) 4,423 4,684 5.9%
銅(1トン、千円) 703 833 18.5%
アルミニウム(1トン、千円) 263 301 14.4%

数値はいずれも日本経済新聞(ドバイ原油以下の価格は安値)


 2017年は、トランプ大統領就任後のTPP脱退発表、日本、中国、中東諸国等に対する様々なツイッターでの発言、前年の国民投票を踏まえた英国のEU離脱正式表明(3月)、仏大統領選挙での右派の台頭(5月)、スペインカタルーニャ州の住民投票(6月)、ドイツの連邦議会選挙での与党勢力の後退(9月)、そして北朝鮮の核ミサイル開発問題等、様々な問題が噴出した年であったにもかかわらず、日経平均とNYダウといった株価はいずれも年初に比べて上昇しました。日経平均はバブル後の最高値を更新し、NYダウも過去最高値を更新しています。
 原油や金、銅、アルミニウムといった資源価格も、イランとサウジアラビアの関係悪化や中国の景気後退懸念も噂される中、いずれも年初に比べて上昇しています。
 この勢いが続くのか、それとも一定の(大きな)調整が入るのか、景気の行方、モノの価格や流通量がどう変化するのか、要注目です。

 2月は農水産物の輸出についてコメントしました。
 2018年も10月末時点の速報ベースでは前年比5.9%増となっており、過去2年は年末にかけて輸出額が増加しているので、この調子でいけば2013年から5年連続で輸出額は伸びそうです。
 10月末時点の実績を個別に見ると、リンゴが前年実績を下回っているものの、ぶどう、もも、なしといった果実は好調で、数量・金額ともに前年比20%以上増加しています。特に好調ないちごに至っては、前年比、数量ベースで70%近く、金額ベースでも50%以上増加しています。加工食品ではアルコール飲料(含む日本酒)の輸出が好調であり、東京オリンピックが開催される2020年の輸出額目標の1兆円に向けて、来年もさらなる伸びが期待されます。

 3月、4月はコメ(米)の価格についてコメントしました。
 2018年産米についても、各地の生産者がブランド米による差別化を図る動き、飼料米に関する補助金政策といった複雑な外部環境が取り巻く中で、特に外食向け、中食向け等、業務用米が不足・高騰している状況は継続しており、関係者の悩みは大きいようです。
 来年からは1970年から始まった「減反」が廃止されるという、大きなイベントを控えています。全国農業協同組合連合会(JA全中)を中心とした生産調整体制がどう変わっていくのか、飼料米をはじめとする政策との関係も含めて、農業生産者や流通事業者がどのような対応をとっていくのか、目が離せません。
 個人的に嬉しかったのは、4月に触れた福島県産のコシヒカリの価格についてです。
 2014年の秋には会津産コシヒカリの約75%だった中通り産コシヒカリの価格は、現在、会津産とほぼ同じ価格となっています。
 美味で有名な会津産に価格が並ぶとは。生産や流通にかかわるすべての方々のこれまでの、ご苦労、ご尽力を考えると、頭が下がる思いでいっぱいです。

 5月の「現場主義」や6月の「同業他社比較」については、個人として、これからも考え続けなくてはいけないテーマと考えています。何が起こるか読めない時代だからこそ、現場の肌感覚を忘れない、従来の規制概念を外して考えてみる、行動してみるといった視点の重要性は増すことはあれ、減少することはないと思います。

 7月はEUやASEANについて触れました。
 TPPは結局、米国抜きでスタートすることになり、その後11月にTPP11として大筋合意に至りましたが、天然資源に恵まれておらず、今後、人口減少が確実視される我が国は、貿易だけでなく今後は知財を含む様々な知恵やアイデアで世界の国々と交流していかなければならないでしょう。

 8月と9月は暗号(仮想)通貨についてコメントしました。
 価格上昇の激しさと変動幅の大きさに何かと注目が集まっています。コラムに書いた9月時点では40万円から50万円台だったビットコインの価格はその後も急騰を続けました。ただ、12月半ばに一時220万円を超えたものの、一時は35%近く値を下げ、本コラム執筆時点では160万円台で推移するなど、通貨(currency)にしては、激しすぎる乱高下を続けています。
 金融庁はホームページで、「仮想通貨は日本円やドルなどのように国がその価値を保証している「法定通貨」ではありません。インターネットでやり取りされる電子データです。仮想通貨は、価格が変動することがあります。仮想通貨の価格が急落したり、突然無価値になってしまうなど、損をする可能性があります。」等々、注意喚起をしています。また、某メガバンンクグループの社長やFT(フィナンシャルタイムズ)のコメンテーターも暗号通貨について既存の決済システムとの関係や問題点について触れていますが、価格変動だけでなく、実態経済や金融システムとの関わり、マネー・ロンダリングをはじめとする各種規制との折り合いをどうつけていくのか、2018年も注目したいと思っています。

 10月は、普通紙の需要と配送用の段ボール需要の変化に伴う古紙を含めた紙市場の構造変化についてコメントしましたが、2018年も、これまでの既存概念からは思いもつかないような組み合わせから、アッと驚くような変化が起こるのではないでしょうか。一見関係のないモノ(サービス)とモノ(サービス)をどう結び付けられるか、アンテナを高く張り巡らせて、変化の兆しを見逃さないようにしたいと思います。個人的には、ウーバーのような配車サービスアプリや民泊のようにITの技術と既存の規制との間で生じる様々な問題がどうなっていくのか、再生医療やAI、燃料電池をはじめとするエネルギー分野等での技術開発・革新が既存のモノやサービスにどのような影響を与えていくのか、関心は尽きません。
 
 11月は日経商品指数42種についてコメントしました。
今月(12月)の速報値はまだ出ていませんが、この1か月の価格変動から判断して、14か月連続の前年比上昇は確実でしょう。
 日本を含め世界的に失業率が低下しているにもかかわらず、一部の商品価格を除き、全般的な物価上昇には至っていないようです。この点についてどう考えたらいいのか、本格的な景気回復がやってくるのか、私にはわかりませんが、2018年も、前(将来)を見ること、後ろを振り返る(過去の仮説の検証を行うこと)こと、現場感覚を忘れないことをモットーにしていきたいと思っています。

 今年1年、当コラムをご愛読いただき、ありがとうございました。執筆者一同(田中、孫、堀)、深く感謝申し上げますとともに、2018年も変わらぬご愛顧をよろしくお願い申し上げます。
 皆様、よいお年をお迎えください。

(堀記)

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