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2017-02-01 注目動産

この動産に注目! ― 海苔 ―

酉年に入ってから、日本海側を中心に強い寒気の影響で大雪が続き、冬将軍の勢いはなかなか衰えない。とはいうものの、暦上では、立春がすぐ近くまできており、いよいよ春の息吹を本格的に感じられる時期となってきている。筆者は年末年始をゆっくり休み、気持ちを一新して新年を迎えたと思いきや、早も1月末となり、仕事もプライベートも徐々にドライブがかかっているのに、未だに休みの慣性で加速しきれない筆者は、スピードを上げるの に新年早々から四苦八苦している。

仕事のスピードを上げると言えば、やはり昨年から世界中を騒がせているアメリカのトランプ大統領に倣いたいである。就任式からわずか10日程度な のに、いきなりフルスピードで走り出し、相次ぐ大統領令で国内外のいろんな「もの」をひっくり返しており、その立ち振る舞いはまさにパワフルであ る。全速で走る力の源は、信念を貫く有言実行の勢いからきているのか、それとも就任後の支持率が歴代大統領の中で最低だったことを受け、せめて既 存の支持層を固めたい焦りからきているのか、神のみぞ知るところである。

ところで、焦って対策をすると何とかなることもあれば、焦ってもどうにもならないことも世の中には少なくないと思う。今回取り上げたい注目動産 の海苔もどうにもならない動産の1つにあたるかもしれない。日本で消費される海苔は、韓国や中国から一部輸入品があるものの、そのほとんどが国内 で生産されており、主な産地としては、福岡県や熊本県などの九州地区、兵庫県や岡山県などの瀬戸内地区、千葉県や宮城県などの東日本地区が有名で ある。海苔の収穫は例年秋口から翌年の4月前後まで続くが、冬本番は海苔収穫の最盛期にあたる。

海苔の収穫期には、九州や瀬戸内、東日本地区にある各産地において月1~2回のペースで乾海苔の入札会が開催される。今期の乾海苔の出荷状況に ついては、全国漁連のり事業推進協議会のまとめによれば、収穫期がスタートした昨年11月から今月15日の累計出荷量は前期比で約1割減の15億5,700万 枚にとどまっており、出荷不足による影響で相場も強含みで推移している。各産地のうち、瀬戸内や東日本の出荷は順調だが、全国生産シェアの約5割 を占める九州では天候不順(海水温が高く、海苔の成長が遅れる)による出荷が遅れており、この後も出荷の遅れを挽回できるかが、海水の状況次第と いわれている。

筆者は家でも時々ラーメンのトッピングや海苔巻きで海苔を使っており、海苔との接点は少なくない。生産の低迷によって海苔の流通価格が大幅に押 し上げられることはやはりみたくないので、「トランプ大統領」ほどのスピード感がなくても、せめて徐々に生産が回復することを願いたいところである。
 
(孫記)

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